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五嶋みどりの「タングルウッドの奇跡」をもう一度

      2016/09/22

今から30年ほど前の1986年7月26日、毎年恒例のタングルウッド音楽祭で、のちに「奇跡」と呼ばれる演奏会がありました。世界的バイオリニスト、五嶋みどりの名前を一躍有名にしたのが、この「タングルウッドの奇跡」です。よく知られた話ではありますが、これがいかにドラマチックだったのかを再確認してもらえれば、と思います。

五嶋みどりが一夜にしてスターとなったタングルウッド音楽祭

アメリカ東海岸、マサチューセッツ州にある、レノックス。五嶋みどりが奇跡を起こしたタングルウッドという町は、このレノックスにあり、ボストンから車で約3時間ほどの場所です。
 

五嶋みどりは、14歳でした。アメリカの生んだ指揮者であり、ピアニストでもあるバーンスタインが、五嶋みどりをソリストとしてタングルウッド音楽祭に招いたのでした。みどりはボストン交響楽団との共演で、難曲とされていた「セレナード」を演奏することになっていたのです。
 

音楽会の会場は野外音楽堂。
7月のその日はとても暑かったため、オーケストラのメンバーは全員ジャケットを着ずに「クール・ビズ」とでもいった格好で演奏を始めました。
 

なんでもないようなこの「ジャケットを着なかった」ということが、偶然にもみどりをさらに一躍有名にした原因にもなっていたのです。
 

第五楽章。何が起こったのか?

「セレナード」の第五楽章、突然みどりのバイオリンのE線が切れます。
 

E線は、バイオリンの弦では一番細い弦。調弦の時にも、E線にだけはアジャスターがついているバイオリンも多く、いちばん繊細な線でもあります。
 

演奏中にE線が切れることは、ないことではありません。
弦が切れると、その反動で跳ね返ってきた弦が目を傷つけることもあるから注意してね(といっても注意しようがないと思うのですが)、と誰しも一度は先生から言われることがあるくらいです。
 

通常、ソリストの弦が切れた場合は、通例、ソリストはコンサートマスター(オーケストラの首席バイオリニスト、と思ってください)の楽器を借りることになっており、みどりもそのようにしました。
 

ただ、みどりのバイオリンは当時まだ分数バイオリンで、3/4サイズ。
慣れない他人の楽器で、しかもサイズ違いの楽器をいきなり本番でひくことはそうたやすいことではないはずです。
 

それを、当時14歳のみどりは、さらっとやってのけました。
「演奏を続けなければ」との思いだけだった、と語っていますが、映像を見ていると、本当に「さらっ」とやっているように見えるのです。
 

ただでさえ、難しい現代曲を弾いていた中で起こったハプニング。
しかしそのハプニングに一瞬で対応したその度胸に、聴衆は驚きを隠せませんでした。
 

コンサートマスターは、受け取ったみどりのバイオリンと副コンサートマスターのバイオリンを交換し、自分は副コンサートマスターのバイオリンで演奏を続けました。
 

こういった場合、コンサートマスターが弦を張り替えたりするのだそうですが、交換用の弦は楽屋で脱いだジャケットのポケットの中。みどりのバイオリンの弦を張り替えることができなかったのです。

演奏継続。ところが再び・・・

コンサートマスターのバイオリンで演奏を再開したみどりでしたが・・・
 

再度E線が切れたのです。
 

みどりは再度、コンサートマスターが持っていた楽器と交換します。
つぎに彼女が受け取った楽器は、副コンサートマスターのまたもやフルサイズの楽器。
 

しかし、みどりはその楽器ですぐに演奏に戻ります。そして最後まで見事に演奏しきったのでした。
 

もしも、上着の中に入っていた交換用の弦を、みどりのバイオリンに張ることができれば、2回目にE線が切れた後は、自分のバイオリンが手元に戻ってきたはずでした。しかし、それができなかったため、みどりは結果的に3艇のバイオリンを駆使して演奏しきったことになったのです。
 

演奏後、2度の危機をものともせず最後まで演奏を止めることがなかったみどりの偉業に、聴衆だけでなくバーンスタインや交響楽団のメンバーからも惜しみない拍手がおくられました。
 

2分20秒あたりでしょうか、コンサートマスターがみどりの肩当を拾い、自分の右の足の上に置いてあげています。
 

そのつぎのわずかなソロパートの合間を縫って、彼女は肩当をつけ、またすぐに演奏に戻っているのがわかります。
 

ニューヨーク・タイムズの一面に

「14歳の少女がタングルウッドを3挺のバイオリンで征服」

という見出しが翌々日のニューヨーク・タイムズの一面に、写真付きで載ったのです。
 

14歳の少女が、2度も弦が切れたことに動じず、サイズの違うバイオリンを使って演奏しきったことに、驚愕と絶賛のコメントが書かれていました。
 

このことは、困難な状況でも乗り越えることの大切さを伝えるためのストーリーとして、後にアメリカの小学校の教科書の題材にもなったのでした。
 

バーンスタインとの出会い

バーンスタインの指揮したタングルウッドの奇跡によって、一躍有名になった五嶋みどり。

実は、このバーンスタインと彼女とを結び付けた人がいました。大阪・堺市の泉陽高校から龍谷大学へと進み、後に広島被爆40年に行われた記念コンサートにバーンスタインを口説き落とし広島へと招くことに成功した、佐野光徳という人です。
 

この広島の記念コンサートで、五嶋みどりとバーンスタインが出会ったのです。
 

みどりの演奏を聴いて、彼女を気に入ったバーンスタインが、翌年のタングルウッド音楽祭に、みどりを起用することになりました。
 

五嶋みどりが天性の才能を持っていたのは事実ではありますが、多くの出会いや支えがあって現在の彼女があるのですね。
 

彼女からもらったたくさんの感動を考えると、彼女にチャンスを与えてくれた人々や、彼女と出会ってきた人々に、こころから感謝する気持ちでいっぱいになります。
 

特に、みどりとバーンスタインとの出会いは彼女の様々な出会いの中でも大きなポイントとなったことは間違いありません。とってもドラマチックな奇跡を生んでくれたのですから。
 

そういった意味でも、五嶋みどりは強い星の下にあるのかもしれませんね!
 

五嶋みどりの音は、魂を揺さぶる力がある

五嶋みどりの何が、ここまで人々を引き付けるのでしょうか。
 

ある演奏家は、「昔は超絶技巧がクローズアップされることが多かった気がするけれど、実は彼女の一番の魅力は「音」そのもの。魂を揺さぶる力がある音を出す。ますますその力が強くなった」と言います。
 

最近、通勤中にフル回転しているのが、これです。
チャイコフスキーが全楽章入っています。
 

 
ライブ盤です。口コミをみてもらったら、その評価の高さに驚くことと思います。
申し訳ないけれども、まだ聞いたことのない方は、絶対に聞いておいた方がいい。
もはや神の領域であり、聴くだけで泣けるという口コミも多数。是非、魂を揺さぶられてみて欲しいです。
 

それから、これもおススメ。
なんと10枚入っています。上のアルバムと被っている曲もあり。
 

 

音楽は、人生を豊かにしてくれるなぁ、とつくづく思う、今日この頃なのでした。

 

 

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